調査の概要

　函館新外環状道路（空港道路）建設に伴う発掘調査を昨年度に引き続き実施しました。遺跡は横津岳を頂とする亀田半島山岳部の南麓にあたり，松倉川の支流である湯の沢川の右岸に位置します。函館平野に向かって緩やかに傾斜する地形上に位置し，調査地点の標高は50ｍ前後です。
　日吉町Ａ遺跡では，昭和45年に開発行為に伴った発掘調査が行われています。縄文時代後期のストーンサークルと称された配石遺構や墓壙，竪穴住居跡や遺物が確認されたことから，祭祀的な遺跡として知られるようになりました。昨年度は湯の沢川の崖面に近い地点を調査し，後期の隅丸長方形の土壙墓4基を同一地点で確認しました。土壙墓には配石を伴うものや副葬品として碧玉製の垂飾が埋納されたものもありました。

特徴的な遺構

　今年度の調査地点は2か所あり，ストーンサークル地点と前年調査区の間の地点（1区）と湯の沢川に合流する枝沢の北端付近（2区）を調査しました。遺構と遺物の大半は1区で確認されました。遺構は後期のものと考えられ，竪穴住居跡1軒，竪穴遺構2基，土坑8基，焼土276か所，剥片集中4か所，盛土状遺構2か所などを確認しました。竪穴住居跡は沢地形の周辺にあり，長径約4ｍの楕円形を呈し，出入口施設，炉跡，柱穴を伴うものでした。沢地形の周辺では竪穴遺構も確認されています。焼土は1区のほぼ全域に広がっていることが判明しました。前年調査区の境界付近まで分布し，墓域付近にはないことが判っています。ほか，頁岩の剥片集中を4か所確認しています。

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  竪穴住居跡の全景

主な遺物

　遺物は総数約8,300点出土しており，これらの多くはストーンサークル地点に近い1区の南側から出土しています。殆どが後期のものであり，土器のうち特徴的なものとして，半球状器形の注口土器やダルマ状をした赤彩注口土器などがあります。石器類は剥片石器が主体であり，石鏃やナイフ・スクレイパー類が多く出土しています。礫石器類は少数であり，内訳として石斧及び擦切残片，敲石，擦石，砥石，石皿，台石などがあります。

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  注口土器

刊行書名

『函館市 日吉町A遺跡(3)』財団報告書第２輯